【生活】レトロな理髪店に行き、日本の床屋文化を再認識する
散髪には月に一度ぐらい行く。
ほとんどの人がそのぐらいのペースで髪を切っていると思うが、散髪とは何とも面倒くさいものだ。だから、多くの人は、ほとんど同じ理髪店もしくは美容室に行っているのではないだろうか?
私もその例にもれず、同じところ、というか同じ人に切ってもらっている。ここ5、6年は、すっとそうしていた。
しかし、今この新型コロナウイルス騒動で、私の行っていた理容室は一時的にだが休業してしまった。
これは自分にとって相当に困ったと思ったのだが、ふと、あの理髪店に行ってみようかとふと思った。
それは、私の自宅に比較的近く、よく車で通るあまり通りの激しくない道沿いにある、レトロな雰囲気の床屋さんだった。
もう気にかけてから数年経っていたので、もしかしたら閉店しているかもしれない、と思ったのだが、行ってみたら、こんなご時世だが、普通に営業していた。
年の頃は、60代かもしかしたら70代か、人のよさそうな男性が一人でやっていた。お客さんは誰もおらず、すぐに切ってもらうことができた。
とても話好きな理髪師だった。
私は、まず、何でこの理髪店に来たかを説明した。
このコロナ騒動で、私の行きつけの理容室は休業してしまった。前々からここはそのレトロな店構えから来てみたいとは思っていた。だから、今回来てみた。しかし、私の髪の毛は相当硬く、整髪するのがとても難しいと言われることが多い。前回切ってから5週間ぐらい経っている。もみあげはかなり伸びたので2センチぐらいは短くしてほしい。あとはすっきりする程度でお願いします。
と、まあこんな感じで散髪を開始してもらった。
みんなそうですね、だいたい行きつけのお店で切りますもんね、という言葉から始まり、わかりました、という感じで自然と切り始めた。
お客さんがどれほど来ているのかはわからないが、暇を持て余していたのかもしれない。いろんな話をしてくれた。
このマスターは4代目で40年ほどやっているとのこと。それほど年には見えなかったがそのキャリアに驚いた。最初は外国人用で、この場所で100年以上続いていること。このマスターは元々、お父さんとお姉さんとやってたとのことだが、特に世襲というわけではなく、物件の大家が床屋を募集して続けていること。この周辺の歴史・地形についてなど。話は止まらなかった。
私がこの5,6年行きつけている理容室は簡易的な散髪を行うだけなので、久しぶりに本格的な理髪店のサービスを受けた感じだ。
散髪し、ひげを剃り、シャンプーをし、整髪する。
かなり丁寧に行ってくれた。終わって時計を見たら、入ってから1時間半が経過していた。
床屋でひげを剃ってもらったのはいつぶりだろうか?
おそらく、2005年にブラジルへ行って以来、そのような理髪店には行っていないだろう。
ということで、15年ぶりぐらいに、本格的な床屋のサービスを受けたことになる。
このマスターが話していたことで印象深いことが、理容師と美容師の違いだ。
理容師は、明治維新以後、人々が散髪する必要が発生したため、必要最低限の価格で行えるよう育てられた職人で、お客さんに対し、1か月間髪型が保てるよう責任を持って切ることが必要だとのこと。
一方で、美容師は、おしゃれのためなので、そのような責任もなく、お客さんが店を出たら、もう関係ないとのことだった。
店内の写真を撮らせてもらえないか、と尋ねると、嫌な顔もせず、どうぞ、ということだった。
思いがけず、久しぶりに、本当に久しぶりに、日本の床屋文化を堪能したのだった。