【文学】沢木耕太郎「 若き実力者たち」 約半世紀前の若き実力者12名についてのルポルタージュ。若き作者の情熱的な取材力・洞察力が光る。
ここ数か月、沢木耕太郎の作品を読み続けている。
沢木耕太郎といえば、最近は小説も書いているが、やはり肩書はノンフィクションライターと言えるだろう。
ノンフィクションといってもいろいろある。
作者自身による紀行文、取材を元に人物等を徹底的に洞察するルポルタージュ、そして対談集など様々である。
多くの人がそうであるように、私も「深夜特急」から入ったせいもあるだろう、特に紀行文が好きなのだが、作者自身はルポルタージュから入っている。
沢木耕太郎のデビュー作は、1970年の「防人のブルース」だが、作品としてまとめられたものとしては、1973年に発表されたこの本がデビューとなる。
私は買った本にレシートを挟む癖があるが、この本は2003年2月に購入していた。
今回、本棚に置かれていたものを取り出して読んだのだが、おそらく2003年に購入した際にはほとんど読んでなかったと思う。内容をまったく思い出せなかったからだ。
この作品は、当時各分野で活躍していた12名の若手実力者に対し、作者自身が取材を行い、分析し、深い洞察力で文章をまとめている。
若き実力者12名は、以下の通り。
尾崎 将司(プロゴルファー)
唐十郎(劇作家)
河野 洋平(政治家)
秋田 明大(学生運動家)
畑 正憲(作家、動物愛好家)
中原 誠(将棋棋士)
黒田 征太郎(イラストレーター)
山田 洋次(映画監督)
堀江 謙一(海洋冒険家)
市川 海老蔵(歌舞伎役者)
小沢 征爾(指揮者)
今から約50年前に活躍していた若き実力者だ。
私が生まれて間もない頃で、2名ほど知らなかったが、ほとんどが知っている人だった。
その後の現在、つまり50年後と比較しながら、興味深く読んだ。
それにしても、若干25歳の若者が、同年齢に近いとは言え、これだけの大物に対し取材を行い文章としてまとめ上げる。質・量ともに簡単なことではない。
そして、解説は、かの井上陽水(ミュージシャン)だ。
コネクション力が尋常ではない。
毎回、沢木耕太郎には脱帽されっぱなしだ。
(2020年8月29日読了)
(2020年9月2日記)