【サッカー】FIFAクラブワールドカップ2020 南米王者パウメイラスは決勝に進めず。欧州王者バイエルンとは戦えず。
FIFAクラブワールドカップ(以下クラブW杯と記す)2020が、カタールで、2月4日(木)から11日(木)の日程で行われている。
昨年12月に開催される予定だったが、新型コロナウイルスの影響で延期された。
今回、南米王者として出場するのは、ほんの1週間ほど前にコパ・リベルタドーレスを制したブラジルの名門、パウメイラス。
そんなパウメイラスの初戦が、2月7日(日)21:00(日本時間8日(月)早朝3:00)から、アル・ライヤーンのエデュケーションシティスタジアムで行われた。
アル・ライヤーンは首都ドーハのすぐ西側に位置し、このスタジアムは、2022年のFIFAワールドカップのために新設したようだ。
対戦相手は、北中米カリブ王者のティグレス(メキシコ)だ。準々決勝でアジア王者の蔚山(韓国)を破って勝ち進んできた。
クラブ世界一を決める大会は、長年、ヨーロッパ王者と南米王者の2チームによる対戦という形で行われていた。
古くはホームアンドアウェーによるインターコンチネンタルカップ。そして1980~2004年まではトヨタカップという名称で、中立地である東京 国立競技場を舞台に一発勝負で試合を行っていた。
そして、ヨーロッパ、南米だけでなく各大陸王者が参加する現在のクラブW杯の形になったのは2005年からだ。
現在のクラブW杯では、各大陸王者プラス開催国王者の計7チーム(今大会は、オセアニア王者が辞退したため6チーム)が参加しトーナメントで争われるのだが、インターコンチネンタルカップ、トヨタカップの経緯もあり、ヨーロッパと南米王者だけはシードされている。そのため、この2チームは準決勝から出場することになっている。
世界中のサッカーファンの大多数は、ヨーロッパと南米王者による決勝戦を見たいだろう。
しかし、2005年にクラブW杯が始まって以来、ヨーロッパと南米王者の対戦が見られなかったケースが4回ある。
大会史上ヨーロッパ王者はすべて決勝に進んでいるが、南米王者は過去4回初戦の準決勝で敗退し、決勝戦へ進めていない。
2010年のインテルナシオナウ(ブラジル)、2013年のアトレチコミネイロ(ブラジル)、2016年のアトレチコナシオナル(コロンビア)、そして2018年のリーベルプレート(アルゼンチン)である。
そのため、南米王者は、まずは初戦となる準決勝をクリアすることが最初の大きなミッションとなる。
そうすることによって初めて、ヨーロッパ王者と戦う権利を得ることができるからだ。
チーム関係者、サポーターは、何はともあれ準決勝をクリアすることを切に願うのである。
この試合は、そんなパウメイラスにとって、とても大事な試合だった。
しかし、結果、そして内容は、予想だにしない残酷なものになってしまった。
ティグレスは序盤から動きがよかった。
開始早々には、目の覚めるような決定的なシュートを打ち、パウメイラスを慌てさせるのに十分だった。
GKウェヴェルトンが見事にセーブし事なきを得たが、決まっていてもおかしくなかった。
その後、ティグレスのショートパス中心の攻撃が目立ってはいたが、パウメイラスもそれなりにカウンター中心の攻撃を行っていた。
しかし、そんな時間帯も長くは続かなかった。
ティグレスが完全にゲームを支配するようになった。
小気味よくショートパスを巧みにつなぎ、分厚い攻撃を披露していた。
それに対しパウメイラスは、カウンターにしか攻撃のオプションを見いだせない。
そんな中、後半8分、ティグレスの裏への抜け出しに、パウメイラスのDFがペナルティアーク内でファイルを犯し、ティグレスにPKが与えられた。
これを、10番でエース、元フランス代表のジニャックが決め、ティグレスに先制点が入った。
入るべくして入ったティグレスのゴールだった。
それにしても、ティグレスのパスサッカーは冴えていた。
何度も細かいパス回しでパウメイラスの守備陣を崩していた。
一対一でもパウメイラスの選手が簡単に交わされるシーンが見られたり、明らかにこの日のパウメイラスは、精彩を欠いていた。
パウメイラスで目立った選手は、何といってもGKウェヴェルトンだ。ウェヴェルトンがいなければ、あと2,3点入っていてもおかしくなかっただろう。
フィールドプレイヤーでは、かつてアルビレックス新潟でプレーしていたFWホニと、後半途中から入ったFWウィリアンぐらいだろうか。
ウィリアンは2012年のコリンチャンスがクラブW杯を制したときのメンバーだが、前線でいいタイミングでボールに絡んだりして攻撃のアクセントになっていた。しかしながら、決定的なチャンスは作れなかった。
パウメイラスの選手のコンディションは相当に悪いように思えた。
終盤、パウメイラスのポルトガル人監督フェヘイラは、テクニカルエリアで時折しゃがんで地面を見つめ、あきらめというか、もうやりようがないといった素振りを見せていた。
後半途中からレジェンド的存在の元ブラジル代表のMFフェリペ・メロを投入するが、存在感はなく、全く風格を表すことはできなかった。
期待のエース、FWルイス・アドリアーノもほとんど見どころはなかった。
反対に、ティグレスのエース、ジニャックは何度もチャンスを作り出しており、格の違いを見せつけていた。
結局、1-0でティグレスが勝利し、北中米カリブ王者として初の決勝進出を決めた。
全体を通して、ティグレスの方が何倍もクオリティの高いサッカーをしていた。
南米王者の誇りは見せられず、パウメイラスは全くいいところなく、敗退してしまった。
パウメレンシにとっては悪夢のような試合だったのではないだろうか。
世界一の称号をかけて、強行軍を押してカタールの地に来たが、世界一はおろか、ヨーロッパの強豪、バイエルンと戦うことする許されなかったのだから。
パウメイラスにとっては、あまりにもコンディションが悪すぎたのだろう。
1月30日(土)にサントスとリベルタドーレス決勝を戦い、2月3日(水)にはボタフォゴ相手にブラジル全国選手権を戦っている。
そして、13時間ほどかけて時差6時間のカタールへ移動し、2月7日(日)にクラブW杯のこの大事な試合を戦ったのだ。
コンディションを整える時間もなかったのだろう。
このスケジュールでは、パウメイラスの選手にとってあまりにも酷だったと思う。
かわいそうではあるが、結果は結果だ。事実を受け入れるしかない。
もう一つの準決勝は、一日遅れで行われたが、ヨーロッパ王者バイエルン(ドイツ)がアフリカ王者アルアハリ(エジプト)を2-0で破り、順当に決勝にコマを進めた。
決勝戦に進めなかったパウメイラスは、アルアハリとの3位決定戦を戦うこととなる。
過去、4度決勝に進めなかった南米王者は、すべて3位決定戦には勝って、南米王者の意地を見せている。
3位決定戦は、決勝戦の前座のような形で、2月11日(木)18:00(日本時間12日(金)深夜0:00)から行われる。
世界一の称号を取り損なったパウメイラスにとっては、正直どうでもいい試合かもしれない。
しかし、世界は見ているのだ。
果たして立て直すことはできるのか。
南米王者として、どのように戦うのか、注目していきたい。
(2021年2月10日記)